『住宅ローン』の仕組みを理解する!!

目次

1.『借入可能額』に騙されるな!

不動産の購入を検討する際、銀行に『借入可能額』の確認をする方は多いと思います。年収から計算をする『借入可能額』と、個々の生活基準から返済できる『返済可能額』は異なるため、『借入可能額』と『返済可能額』の違いを理解し、住宅購入資金の目安を把握することをお勧めいたします。

借入可能額の目安として『昨年の税込年収の5倍から6倍』と耳にしたことがある方も多いと思いますが、大抵の金融機関が税込年収の返済負担率を約30%で設定しているようです。


税込年収 × 30% ー 他のローンの返済額 = (a)円
金融機関が貸してくれるローン額 = (a) ÷ 12 ÷ (b) × 1,000,000円
※(b)に入る金額→年利◯%の場合の100万円あたりの返済金額
http://www.fpoffice.biz/_userdata/ganrikintou.pdf
※年数は『最終返済時の年齢 ー 現在の年齢』と35年の短い方を選択


税込年収:5,000,000円 借入期間:35年 100万円あたりの返済額:3,313円
5,000,000円 × 30% ー 0円 = (1,500,000)円
金融機関が貸してくれるローン額 = (1,500,000)円 ÷ 12ヶ月 ÷ (3,313)円 × 100万円
37,730,154円(年収の約7倍)

以外に多く借りられると感じた方も多いと思いますが、実際は税込年収ではなく、手取額(税込年収の約75%)から返済するため、金融機関が提示する借入可能額を満額で借入してしまうと返済は大変厳しい状況になります。

上記の例で計算した借入可能額を満額借りた場合

借入額:37,730,154円 金利:2% 借入期間:35年 ボーナス払い:なし 頭金:なし
税込年収: 5,000,000円 月々収入:41,667円(5,000,000÷12ヶ月)
手取額年収:約3,750,000円(年収の75%) 月々収入:312,500円(3,750,000円÷12ヶ月)

月々返済額:124,986円
住宅ローン返済額計算(エクセル)
http://www.rise-estate.com/hennsai50.html

金融機関の返済額計算
税込年収 5,000,000円 ÷ 12ヶ月 = 416,667円(月々収入)
返済負担率 = 124,986円(月々返済額)÷ 416,667円(月々収入)× 100 = 約30%
月々収入の3割を返済に当てる計算


実際の返済額計算
手取額年収 3,750,000円(年収の75%) ÷ 12ヶ月 = 312,500円(月々収入)
返済負担率124,986円(月々返済額)÷ 312,500円(月々収入)× 100 = 約40%
月々収入の4割を返済に当てる計算

 上記の計算から『借入可能額』を満額で借入した場合は、月々の返済負担が大きいことは理解していただけたと思います。個々の家族構成や生活基準は異なるため、それを理解した上で『返済可能額』の把握はとても重要です。

それぞれの生活基準から返済負担率計算し、無理なく返済できる『返済可能額』の計算をお勧めします。

2.頭金と繰り上げ返済、返済期間を上手に使う!

中古住宅の購入を検討する際、銀行や不動産会社、ファイナンシャルプランナーに資金の計画をする方は多いと思います。

『頭金はできるだけ多く入れた方が良い』『頭金は購入価格の20%以上は準備した方が良い』など、頭金を準備することを勧められた方は多いと思います。

しかし、実際はどうなのでしょうか。住宅ローンを受ける際の頭金や繰り上げ返済、返済期間の上手な使い方(数字のカラクリ)を理解すれば、今後の資金計画の考え方が変わるかもしれません。

2-①.頭金はいらない!?

昔とは違い、多くの金融機関が物件価格の100%を融資する商品を出しています。また、購入金額以外にかかる諸費用のローン商品も出ており、頭金が0でも住宅ローンが組める時代になっています。

しかし、全く頭金を入れずに借入(住宅ローン)をしてしまうと、月々の支払額に大きな負担がかかります。

それぞれの家族構成や状況により返済可能額は異なるため、頭金が必要なのか!?どのタイミングで繰り上げ返済をするのか!?繰り上げ返済をする場合は、『期間短縮型』『返済額軽減型』のどちらを選択するのか!?をしっかりと理解し、計画を立てる必要があります。

住宅を購入するタイミングは人それぞれですが、この購入のタイミングと合わせて家族のライフプラン設計(出産や子育て、子どもの高校入学、大学進学、老後など)をやり、頭金を幾ら入れるのか!?何年後に○○○円の繰り上げ返済をするか!?などの計画をするといいかもしれません。

ここで、①頭金600万円の場合と、②頭金300万円、5年後に300万円の繰り上げ返済の場合の返済例を記載させていただきます。総支払額の差額がどれくらいあるのかを確認してみて下さい。

条件
物件価格:3000万円 金利:2%(全期間固定の場合) 返済期間:35年間

①頭金600万円(物件価格の20%)の場合
3,000万円 ー 600万円 = 2,400万円
借入額 = 2,400万円
毎月の返済額 = 7万9,503円
返済総額 = 3,939万円(頭金600万円含む)

②頭金300万円(物件価格の10%)、5年後の300万円の繰り上げ返済の場合
3000万円 ー 300万円 = 2700万円
借入額 = 2700万円
毎月の返済額 = 89,440円
繰り上げ返済による利息軽減額 = 99万円
繰り上げ返済後の毎月返済額 = 7万8,352円
返済総額 = 3,957万円(頭金300万円と繰り上げ返済の300万円を含む)

返済総額の差額 = 18万円

①と②の返済総額の差額は18万円、②の繰り上げ返済による利息軽減額は99万円という計算結果になりました。5年間で18万円のいう金額に対する価値観は人それぞれですが、無理をして現金600万円を頭金として支払うのか!?

もしくは、たった18万円の差額であれば、もしもの時に備え、現金300万円は手元に残し、個々のライフプランと相談をしながら繰り上げ返済をするのか!?

どちらも間違いではないですが、家族構成や生活基準、個々のライフプランにより、どういった住宅ローンを選択すべきかは異なります。

『月々の返済額を抑えたい』『少々の無理をしても早く支払いを終えたい』など、何を重視するのかを明確にし、しっかりとした返済計画を立てることが大切です。

3.住宅ローンの保証料について

住宅を購入する際、固定資産税や不動産登記費用など、色々な諸費用がかかりますが、その中でも負担が大きいのが住宅ローン保証料です。

住宅ローン保証料とは、ローンを組んだ債務者が、支払いが出来なくなった場合に保証会社が立て替えていただくためのお金です。立て替えということであり、保証料を払っているからと返済がなくなる訳ではありません。保証会社は、債務者に対して代金を請求します。

つまり、支払うお金は変わらないのにも関わらず、わざわざ保証料(無駄なお金)を払うことになります。言い換えれば、銀行が代金を回収出来ないリスクを軽減するための保証料を債務者が払い、保証会社に加入すると言うことです。

銀行の代金回収が出来ないリスクを債務者がお金を出すのに納得できない方もいますが、金融機関の借入条件として『保証会社の保証を受けること』となっている実態が多いです。

一方、保証会社が代金を代わりに払っていただくため、連帯保証人はつけなくて良いというメリットがあります。

3-①.住宅ローン保証料の種類

住宅ローン保証料の支払方法は『一括払い型』『利息組み込み型』の二通りがあります。

『一括払い型』
住宅ローンの契約時に一括で支払う方法です。
保証料の金額は、金融機関が提携する保証会社により異なります。また、融資額や借入期間、返済方法、勤務先の属性などによっても異なります。

『金利上乗せ型』
住宅ローンの金利に0.2%前後の金利が上乗せされ、住宅ローンと一緒に支払う方法です。

一部の金融機関では『保証料無料』の商品があります。(例 ・住信SBIネット銀行 ・新生銀行 ・東京スター銀行 ・イオン銀行 ・フラット35 

4.民間金融機関(住宅ローン)と住宅金融支援機構(フラット35)の審査基準の違い

銀行や住宅金融支援機構が重視する、住宅ローン審査の対象は大きく分けて2つあります。一つが『人物』であり、年収や年齢、勤続年数などが審査の対象になります。もう一つが『物件』です。物件の担保評価や権利関係などが審査の対象になります。

日本の金融機関や不動産会社は、中古住宅を正しく査定する環境が整っていない実態があり、銀行は物件よりも『人物』を審査の対象にしている傾向があります。一方で、銀行とは違い、住宅金融支援機構の商品『フラット35』は、人物よりも『物件』を審査の対象にしています。

民間金融機関の審査基準は『民間金融機関の審査基準(住宅ローン)』、住宅金融支援機構(フラット35)の審査基準は『フラット35の審査基準』をご覧ください。

5.住宅ローン(融資)を受けられない『建築物』!!

民間の金融機関は物件よりも『人物』を審査の対象にすると書かせていただきましたが、『物件』の審査項目としては、『違法建築物』『既存不適格建築物』ではないかの確認をします。

このどちらかに該当した場合、銀行は融資をしない場合がほとんどです。下記に詳細を書かせていただきます。

5-①.違法建築物

住宅や土地の購入を検討している方の中には、『建ぺい率』と『容積率』という言葉を聞いたことがあると思います。

違法建築物の一つに、定められた『建ぺい率』と『容積率』の基準を超えた建築物があります。(例:建ぺい率60%、容積率200%など)土地や建物を購入する際、この建ぺい率と容積率の内容は、ぜひ、理解しておいた方が良いでしょう。

『建ぺい率』
敷地面積に対しての建築物の割合(面積)
例:100㎡と敷地に対して、60㎡の面積がある建築物があれば、その建ぺい率は60%です。

『容積率』
敷地面積に対する延床面積の割合
例:100㎡の敷地に、1階50㎡、2階50㎡、合計100㎡の建築物は、その容積率は100%です。
100平方メートルの敷地に、1階60平方メートル、2階40平方メートル、合計100平方メートルの建物があれば、その容積率は100%となります。

また、これ以外にも、耐火・防火構造が基準で定められていない物であったり、建築基準法で認められた道路(幅員4m以上)に、接道2m以上接していない建築物そもそも建築確認が行われていない物件なども違法建築物に該当します。

このような違法建築物は、再建築ができない可能性が高いため、銀行の融資を受けて購入することは難しいでしょう。

5-②.既存不適格建築物

建築や増改築の際、違法建築物ではなかったが、国の法改正により違法建築物の基準に該当することになった建築物を『既存不適格建築物』言います。

違法建築物は、法令に基づき、建築物の移転や除去、改築、使用禁止・制限などの命令の対象になりますが、既存不適格建築物は、対象になりません。しかし、建て替えや増改築(一定規模以上)をする場合、法改正後の定めに適合させられることになっています。

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